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東京新聞・中日新聞 2020年6月5日

 世界の二大超大国で、人権危機が続いている。

一つは米国。白人警官が黒人男性を死なせたことをきっかけに、全米に抗議デモが広がった。背景には長年続く構造的な人種差別がある。米国では黒人殺害など「警察の蛮行」が長年問題となっているが、蛮行を加えた警察官が有罪となった例はほとんどない。警察の対応だけでなく住宅、教育、医療など広範囲で米国の人種格差は深刻だ。

そして中国。香港の自由な言論社会を根本から破壊する「国家安全法」の導入が、全国人民代表大会で採択された。香港の中国返還以来、最大の人権上の打撃だ。中国政府は「国家安全」を広く解釈し、基本的人権を平和的に行使する活動家や弁護士、学者、少数民族らを国家転覆、動乱扇動、国家機密漏えいなどの罪で何年も、時として一生涯にわたり投獄してきた。香港の人々も発言や抗議行動、公職への立候補などの権利を行使する際、逮捕や重罪に問われる危険にさらされる。

日本政府は国際社会と連帯し、批判の声をはっきり上げ、避難してくる人々の在留を認めるべきだ。倫理面で米国、中国が地盤沈下する中、世界第三の経済大国として、より積極的に発言・行動してほしいと切に願う。世界中の人々の人権を守るために、日本が果たすべき役割は増している。日本が行動するか否かは、地球の未来に影響する。

(ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表)

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