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国家は「相互に有益な協力」に関する中国の不誠実な決議に反対すべき

決議は人権ではなく中国政府に利益をもたらす

今週、国連人権理事会が活動を再開する際に、各国政府は、「相互に有益な協力」という不誠実なタイトルの決議案を通じて、国際人権の枠組みを書き換えんとする中国の試みを拒否すべきだ。

当該事案について中国が決議案を提出するのは今回で2回目だ。国際人権法を国家間関係の問題と位置付けようとする試みで、個人の権利を保護する国家の責任を無視し、基本的な人権を交渉と妥協の対象として扱い、市民社会の役割を無視する内容だ。

2018年3月に中国政府が提案した最初の決議案は、人権理事会の諮問委員会からの報告を要請するものだった。多くの代表団は懸念を表明しつつも、疑わしきは発案者の利益にということで決議を棄権し、同委員会の出方をまつことにした。

中国政府の意図はその後すぐに明らかになる。同委員会へのサブミッションで中国政府は、当該決議を「新しいタイプの国際関係の構築」として歓迎したのである。中国政府は、人権が内政「干渉」に利用されており、ひいては「人権ガバナンスの世界的な状況を害する」と主張している。

これは全く偶然ではない。中国は常日頃から、もっとも重大な人権侵害にかんしてさえ、国家に責任を問う人権理事会の努力に水を差している。イスラム協力機構(OIC)と欧州連合(EU)が共同で、ミャンマーのロヒンギャ・ムスリムに対する国際的な犯罪に対応するための決議案を発表した際も、中国は反対票を投じた2国のうちのひとつだった。

人権理事会会合の開催直前に公開された諮問委員会報告書は、こうした懸念を深めるものだ。「相互に有益な協力」の概念に重大な意見の対立が存在することを認めつつも、明確な定義を示していない。この文言は、理事会ですでに議題となっている技術協力やキャパシティビルディングといった、すでに確立されている概念に対して何ら付加価値を与えない一方、「いわゆる『普遍的な』価値観」とするなど、権利の普遍性に疑問を投げかけさえしている。

さらに「相互に有益な協力」は、実際にほとんど存在しないといっていい各国の交渉力の平等を前提としている。 中国が協力を「有益」とみなすのは、それが自らの利に資する場合のみであり、これまで何度も言いなりにならない国を威嚇してきた。昨年、理事会による同国の普遍的・定期的レビューの際には、新疆自治区における重大な違反行為にかんする国家主導のパネルに出席しないよう、「二国間関係のため」各国代表団に警告する口上書を発出。中国の一体一路構想を受け入れた国々は、それには隠された政治的コストを伴うことを思い知ることになった。中国国連大使は、人権高等弁務官が新疆自治区に自由にアクセスできるという条件を模索することは、「国連の最善の利益」にはならないと警告している。

こうした懸念はとりわけこの数カ月間に深まった。新型コロナウイルス感染症パンデミックに対する世界の対応は、ウイルスについて最初に警告した中国人医師たちの口封じインターネット上での人びとのやり取りの検閲、集団発生をめぐる政府の対応を批判した人びとの恣意的な拘禁などにより、人命と暮らしを犠牲にするかたちで中国に妨げられてきた。EUは、中国がパンデミックの文脈で他国に対し展開している誤報キャンペーンについて文書化した。オーストラリアが新型コロナウイルス感染症の発生源と扱いについて調査を模索した際には、中国政府が貿易制裁を発動した。今回、当該決議が採択された場合に起こるであろうパターンが鮮明になりつつある。

協力に関する決議案で意見が二分している状況は避けるべきで、中国政府はコンセンサスがないかぎり、当該決議案を進めるべきではない。他国の懸念にもかかわらず投票手続きに持ち込むようなことがあれば、「相互に有益な」協力アプローチをめぐる中国政府の姿勢は言わずもがな、だ。

この問題は、文言の編集や改正、粉飾などでは対応できない根本的なイデオロギーの違いを反映している。各国政府は、国際人権の枠組みを弱体化させるこの露骨な試みを許さず、反対票を投じるべきだ。

皆様のあたたかなご支援で、世界各地の人権を守る活動を続けることができます。

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