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A protester holds a placard opposing Myanmar coup leader Min Aung Hlaing during a demonstration at United Nations University in Tokyo, Japan, February 11, 2021. © Photo by Viola Kam/SOPA Images/Sipa USA, Sipa via AP Images

ミャンマー治安部隊は、2021年2月1日の軍事クーデター実行後、1,300人近くを殺害した。逮捕者は1万人を超え、現在も7,400人程度が身柄を拘束されている。「軍事政権」の支配下にある裁判所は、未成年者2人を含む65人に死刑を宣告している。

このような暴力を受けて、全国各地で反軍政の民兵組織が結成された。この組織は治安部隊だけでなく、「軍政」支持者と見なされた民間人も標的にしている。

日本はミャンマーの親密な同盟国であるため、一定の措置を講じてきた。日本政府はクーデターを非難し、暴力行為の停止と、アウンサンスーチー国家最高顧問を含む民選政府高官の釈放を要求した。2021年の初めには、人道支援以外の政府開発援助(ODA)の新規案件を中止したが、既存案件の継続は認めている。

また、日本政府は東南アジア諸国連合(ASEAN)の動きにも協力的だ。ASEANは特使を派遣し、「軍政」に対して人権侵害行為への対処を強く求めている。6月には、「ミャンマーにおける軍事クーデターを非難し、民主的な政治体制の早期回復を求める」決議が国会で可決された。

しかし、日本政府の対応を他の民主主義諸国のものと比べると、いまだ十分ではないことがわかる。各国政府は国軍高官と軍政関係者、及び軍の経済権益に対する対象限定型制裁を実施しているが、日本はいまだに制裁を課していないのだ。

そして今、クーデターから一年の節目を目前に、日本政府は二枚舌外交を展開しているようだ。公式にはクーデターを批判する各国政府と連携する一方で、「軍政」との外交関係の正常化を加速させている。このような行為は、ミャンマー軍の「人道に対する罪」について責任追及に励んでいる国際社会の取り組みを覆すリスクがある。

共同通信によると、外務省は今年5月に「軍政」が任命した外交官5人を受け入れた。ミャンマーに在留する日本人を危険から守るため、政権との「実務的なつながり」が必要だと説明した。しかし、これは大きな政策転換であった。日本政府はクーデター発生以来、民主的に行われた選挙の結果を覆して「軍事政権」を発足させた国軍の動きを正当化するとして、国軍が任命した外交官の受け入れを拒否していたのである。

11月には、「ミャンマー国民和解担当日本政府代表」に任命された日本財団の笹川陽平会長が、軍政トップのミンアウンフライン上級大将・国軍最高司令官を訪問し、「現在の情勢とミャンマーの和平プロセス、また日本の対ミャンマー支援」について会談した。笹川氏は以前、国軍への対象限定型制裁措置について懸念を示し、実施されれば「中国の影響力が増大する」と主張してきた。林芳正外務大臣は、笹川氏のミャンマー訪問は個人的なものだと釈明したが、ミャンマー国内の独立系メディアは笹川氏を「日本の特使」と報じた

ヒューマン・ライツ・ウォッチが入手した日本ミャンマー協会の会員限定協会誌によると、元郵政相で日本ミャンマー協会理事の渡邉秀央氏も、クーデター後にミン・アウン・フライン最高司令官と2度面会している。同氏は、日本企業の対ミャンマー投資、特にティラワ経済特区への投資の代表的な旗振り役だ。

同誌によると、渡邉氏が9月にミャンマーでミンアウンフライン氏と面会した際、最高司令官は6月の国会決議に「大きなショック」を受けていた。渡邉氏はミンアウンフライン氏に同情する形で、同決議を「内政干渉にも値する」とした上、「極めて残念かつ情けない」ことだと批判。茂木敏充外務大臣(当時)はこの訪問を私的なものと説明したが、ミンアウンフライン氏がそう捉えたと考えるのはナイーブである。

渡邉氏は同誌で、ミンアウンフライン氏は渡邉氏を「日本のミャンマー国軍との窓口」として信頼していると述べた。さらに、クーデター前に日本政府とミャンマー政府が協議していたモン州の新規経済特区に関する日本政府の立場を「再度」ミンアウンフライン氏に伝えたとも記している。同誌によると、ミンアウンフライン氏はこの案件に改めて「賛同」した。

ミャンマー国軍や政府内に強力なコネがある日本人の有力者が、私的な立場で行動しているという日本政府の主張は今に始まったことではない。

元外交官の大島賢三氏は、2018年にラカイン州のロヒンギャに対する国軍の民族浄化作戦を調査するミャンマーの国内委員会に参加した。日本の外務省は委員会の設置を歓迎。ヒューマン・ライツ・ウォッチは外務省に資料を提示した上で、ミャンマー政府は2012年以降、同様の調査委員会を8回設置しているが、重大な人権侵害の責任追及を実現したものは一つもないと指摘した。しかし、外務省は、大島氏の参加は個人的なものであり、省としては無関係であると主張した。

外務省は、笹川氏や渡邉氏に促され、ミンアウンフライン氏による恐怖支配を対話だけで封じ込めることができると信じているようだ。このような認知的不協和は、日本がミャンマーに巨額の投資を行っていることや、中国の影響力をどう封じ込めるかに重大な懸念を向けていることからすると、無理からぬことだろう。

皮肉にも、何よりも外務省が耳を傾けるべきなのは、自分たちの同僚だったある人物の言葉である。

樋口建史前駐ミャンマー大使は、2014年から2018年までの在任期間中、ミンアウンフライン氏の本質を見抜けなかったことを「恥じている」と日経新聞のインタビューで発言。同氏は日本政府に対し「甘い見通しや客観性を欠いた思い込みを捨てる」べきと忠告した。さらに、ミャンマーの人びとの命を救い、苦しみを軽減することを優先すべきだと主張し、国軍への制裁を提言している。

また樋口氏は、外務省や笹川氏の「中国が…」という決まり文句を退けて、「それほど単純な構図ではない」「国軍自身が、中国以外の選択肢がない状況に戻りたいとは考えてはいない」などと指摘した。

日本はこうした二枚舌外交をやめて、各国政府と協力した上、国軍とその経済権益に対して対象限定型制裁を速やかに実施するべきだ。同時に、進行中の人道目的以外のODA案件も停止すべきである。また、笹川氏と渡邉氏は、ミンアウンフライン氏の機嫌取りではなく、ミャンマーの人々に対する暴力行為の停止、人権の尊重、そして破壊された民主主義体制の回復を最高司令官に求めるべきだ。

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